[☆バレエコラム1]
- 大人のバレエ -
 
 
 いま、バレエがブームになっているようです。バレエパラダイスショップにも、大人からバレエを始めましたというお客様も多く
  いらっしゃいます。頭で理解していても身体が思うように動かなかったり、自分の身体のクセをあらためて思い知らされたり
  解放しなければいけない身体に知らないうちに力が入ってしまったり
  ・・・・・・そんないくつもの小さな壁にぶつかってはいませんか?
  せっかく始めたバレエのレッスンを、楽しく続けることができるように・・・
  バレエの先生にお話を伺いました。


  小さい頃から習っていなければ、バレリーナになることはできないけれど、大人になって始めたからこそ、楽しめることやわかる
  ことがあるのではないでしょうか。グラン・フェッテ・アン・トールナンや11回転ものピルエットを目指すのではなく、自然な身体の
  美しさを大切にすることです。
  そのためには、呼吸がとても大事。身体のすみずみまで呼吸させて、エネルギーの流れを感じる。ナチュラルな身体から生じる
  無駄のないシンプルな自然な動き。硬くなった身体を少しずつ解きほぐし、自然な状態の身体を取り戻す。それまでほとんど
  使われていなかった身体の各部を使う大人からのバレエでは、あせって見かけの美しさを追求するのではなく、自分の身体の
  不自由さを感じながらも、一つずつの各部分を意識することが、自然な美しさへのシンプルな道です。

  
いかかでしょうか?せっかく始めたバレエ。
  楽しく充実してレッスンが続けられますように。

  
[☆バレエコラム2]
- MIYAKO 吉田都の軌跡 -
                        
  一冊の本に目が止まりました。
  「MIYAKO 英国ロイヤルバレエ団の至宝・吉田都の軌跡」 文藝春秋社 2001年8月発刊

  吉田都さん。この名前だけで、他に説明の必要がない世界的プリマ、英国ロイヤルバレエ団のプリンシバル。
  2003年から、UNHCR(国連高等弁務官事務所)の難民教育基金支援公演、チャリティー活動を行い、2004年には、その功績と
  社会貢献が認められ、ユネスコ平和芸術家に任命される。
  たくさんの写真とともに語られる都さんご本人による自伝的エッセイの中で、都さんの歩んできた道のりにおいて出会った困難や
  そしてそのことに対峙する率直な思い・姿勢が強く印象に残りました。
  足を故障したとき、ヨガを通じて自分自身の身体を見つめ直し、なぜ踊りたいのか、どういうふうに踊りたいのかを初めて考え、
  自分にとってのバレエを真剣に考える機会になった ということ。
  ロイヤルバレエ学校では、西洋人と東洋人の体型、顔の骨格の違いに打ちのめされ、その葛藤のうちに、自分の持っている
  ものを最大限に生かすことを悟ったといいうこと。
  十人いたら十通りの考え方があるのが当たり前で、それぞれが自分の考え方を信じ、他に同意しなくてもその考え方を尊重
  する そのことがバレエにも反映されているということを異文化の中で学んだこと。
  身体の故障で踊れなくなったときにも、毎回、一からやり直せるチャンスと捉え、その時々の課題と向き合いながらその故障と
  付き合っていく精神力を育んだということ。
  形式や決まりごとが重視されるクラシック枠の中の自由な部分で、自分を表現し、自分らしさを追求し続ける姿勢。
  そして、自分を支え続けてくれているご両親たくさんの友人への感謝の思い。今まで学び経験したことを、後輩たちに伝え、
  自分を育ててくれたバレエ界に貢献したいという明日への思い。
  
  巻末に載っている MIYAKOさんへのメッセージの中から、特に印象的だったものを最後に。

  英国ロイヤルバレエ団副芸術監督 モニカ・メイソン氏
  
「すばらしい音感、叙情的な表現力、高い飛躍...小柄でありながら舞台の上では驚くほど大きく踊ることができる。
   アーティストとしてすべきことを、どんな些細なこともないがしろにしない」


  バーミンガムロイヤルバレエ団マネージャー、ケヴィン・オヘア氏
  
「ステージでの美しく、温かで、誠実で、ユーモアも感じさせる姿はそのままオフステージの彼女の姿でもある」

  英国ロイヤルバレエ団プリンシバル、ジョナサン・コープ氏
  
「MIYAKOは自信と信念という言葉を備えた真のアーティストだ」

  そして、バーミンガムロイヤルバレエ団名誉監督 ピーター・ライト卿
 
 「彼女を真に偉大な存在たらしめるのは、献身的に芸術に対峙し、そのために強い克己心を保つことができるという、彼女に
   備わっていた稀にみる才能である」
[☆バレエコラム3]
- 下村由理恵さん -

                          
   
  下村由理恵さんの舞台を見ました。

  下村由理恵さん、日本が誇る世界的バレリーナ。
  由理恵さんの詳しいプロフィールについては、バレエパラダイスのポータルサイトをごらんください。
  由理恵さんらしさを評した、端的な記事をひとつだけここでご紹介します。
  モスクワ国際コンクールにおいて史上最年少で銀賞を受賞し、その後スコティッシュ・バレエのプリンシバルをつとめる。
  抜群の身体能力と、まるで身体が言葉を話しているような演技力をかねそなえた稀有なダンサーであり、熱狂的なファンも多い。
  (日経新聞 2004/11/8)

  演目はドン・キホーテ。
  下村由理恵さんの歩まれているバレエの道、その道のりにおける由理恵さんご自身の経験が、心に沁みこむように伝わって
  きました。たゆまぬ日々の積み重ねと、ご自身の信念を貫くゆるぎない姿勢。完璧な技術、めりはりのきいた踊り、豊かな表情、
  身体の内側から溢れる美しさ。演じる役柄の中に自分の踊りのイメージを体現し、そのすべてを観客に伝え魅せるというバレエの
  道を歩んできたプロとしての確固たる意思を強く感じました。
  
血の通ったバレリーナ。
  そんなことを思いました。
  アラベスクやアチチュードのバランスの、美しくそして堂々とした静止。自在にアクセントをつけ、見ている側が一緒のリズムに乗せ
  られてしまうような、回転のスピードと潔い切れ。流れるラインのような踊り。
  観客に感動を与え、踊り手と観客を一体にしてしまうような鮮烈なアピール。なにより、ご自身が踊ることを楽しんでいらっしゃる
  ことが、見ているコチラ側に余裕として伝わり、由理恵さんの踊りに、熱いものを注ぎ込まれたような全身が脈打つ思いをもらい
  ました。
  そして、もうひとつ、年齢を重ねることの美しさを教えてもらいました。
  下村由理恵さんは、ご自身が主催する下村由理恵アンサンブルと共に、パートナーであり、社団法人日本バレエ協会理事、
  演出・振付家として活躍されている篠原聖一さんと、2000年から日本を拠点としてご活躍されています。
[☆バレエコラム4]
- バレリーナとして必要なこと -
  

                              


  先日放映された「学校へ行こう!MAX!」で吉田都さんの語られた言葉です。
 
 「コンプレックスを乗り越えるのは自分次第。何を表現したいのか。自分らしさを自分の持っているもので表現すること」
  前回のコラムで書かせていただいたように、吉田都さんは、ロイヤルバレエ団の中で、体型・骨格・顔・西洋人との違いに
  悩んでいた時、先生から「あなたは何を表現したいの?」と問われ、ししてこのことに気づいたそうです。
  「バレリーナの教養として必要なものは何ですか?」という質問への答えから抜粋をお届けします。


 
 【 森下 洋子 】 
  
彫刻に捉えられた一瞬の動きに舞台での動きと通じる部分があります。例えば、マリア像の顔の傾け方、弥勒菩薩の指。
  また、人を思いやる気持ち、感謝する心。人間の本当のふれあいのなかからいろんなことを学ぶことが大切です。


 
 【 大原 永子 】 
  
最低限のコモンセンス一般常識が必要です。それは、他人の立場を理解して思いやれること。内面の教養や人間性が舞台に
  表れるのだから。プリンシバルは他のダンサーのことまで目配りできないといけません。落語の間の取りかた、料理の塩加減、
  それがバレエにも通じます。よい間は、全体的に余裕を感じさせます。タイミング、間の取りかたはとても大事だと思います。


  
【 下村 由理恵 】 
  
踊りたいという気持ちだけは誰にも負けないと、常に思っていました。ゆとりがあれば人に思いやりをもつことができます。
  服部智恵子先生に言われた「ただ外国に行って、その地を踏んでその空気を吸ってくるだけでいい」という意味がイギリスに
  行って初めてわかりました。プロを目指す子たちは、日本を離れ外国の舞台にも出てほしい。大変さを乗り越えたときに
  得るものは大きいから。そして楽をしてはいけない、辛い思いをすればするほど後で返ってくるものは大きいのです。
  最大のめぐり会いは、大原永子先生との出会い。自分のことより人のことを考える生き方にとても影響をうけました。


  
【 草刈 民代 】 
  
日常をどう生きているかがとても大切。その生き方が舞台に反映されます。いろんなことに興味をもつ姿勢も大切。
  肉体的条件のほかに、物事を理解する力。音楽を理解することも含めて、大事なことは何かを見極めること。
  努力するということがどういうことなのか、わかった上で取り組まないと何も生まれません。
  そして何より一番大切なのは踊りが好きだという純粋なピュアな気持ち。


  
「バレリーナのアルバム」新書館1998年より
[☆バレエコラム5]
- マイヤプリセツカヤ 「20世紀最高のバレリーナ」 -
                        


  「高松宮殿下記念 世界文化賞」が9/8、第18回受賞者が発表されました。
  演劇・映像部門受賞者は、マイヤ・プリセツカヤ。
  過去には’93年にモーリス・ベジャール、’99年にビナ・バウシュが受賞しています。
  80歳を超えてなお漂う気品と魅力。その力はいったいどこから・・・という質問に、両手を頭上に掲げて

  
「天からよ」

 
 スターリン体制化で父が銃殺され、母が流刑される。それでも、叔母宅からボリショイ・バレエ学校に通い続け、
  最優秀で卒業。当局から24時間監視され続け、亡命することもできず、国家の奴隷として束縛され続けながらも、
  バレエを通じて生きる喜びと希望を多くの観客に与え続けてきました。
  体制下では、自らの創作を演じることもできず、西側の有名な演出家振付家をよぶこともできず、同じロシアの振振付師
  との舞台であっても、新しいことには必ず妨害が入り許可されなかったといいます。
  しかし、舞台芸術の可能性を追求し続け、ローラン・プティやモーリス・ベジャールらと「カルメン組曲」や「ボレロ」などの
  新作に挑戦。
  「20世紀最高のバレリーナ」と称賛される所については

 
 「強し意志が多少あったからでしょう。そして、夫(作曲家のロディオン・シチェドリン氏)の助けがあったから。夫が私の
  芸術家としての命も長引かせてくれたのです」

 
  
自伝「闘う白鳥」は、世界的なプリマとされる自らの悲惨な生活を、真実を外国の人に知ってもらうために書いたそうです。
  そして今なお、シチェドリン氏振り付けによる演劇で、女優としての道を切り開いています。

  
「私はいつも現在を生きているのです。過去のことは忘れているし、これから何が起きようとも恐れることはありません。
   私の最新の作品に全力を尽くしていくつもりです」


 
 参考:2006/9/8産経新聞記事、1996/9/5週間文春記事
[☆バレエコラム6]
- ティアラ -

                      
  ティアラ。
  くるみ割り人形の金平糖、眠りの森のオーロラ姫、ドン・キホーテのドルネシア姫・・・
  バレエの中のお姫さまに、ティアラは欠かせません。ティアラは、はるか昔から、成功と幸福のシンボルだそうです。
  
  ギリシア神話の中では、女神アテナが人間の娘パンドラに、不思議なデザインをした黄金のティアラを贈ったとあります。
  大地と大海に住むあらゆる生き物が刻み込まれ、あまりに生き生きとしていて、鳴き声が聞こえたそう。
  ティアラはペルシャ語で王冠や頭巾を表す言葉。
  古代エジプト、ペルシアでは、男性女性にかかわらず、地位の高い人がつけていました。頭上の輝きで威厳を高めるために。
  中世には、ローマ法王が、現世、霊界、煉獄をつかさどる、三重のティアラを頭にいただいたそうです。
  ナポレオン一世は、皇后ジョセフィーヌを戴冠式で女神のように輝かせるために、月桂樹のティアラを作らせました。
  それからティアラは夜の装いとして宮廷の女性たちの流行となったそうです。しかし、その後ジョセフィーヌは離縁され、
  ハブスブルク家の皇女マリー・ルイーズがナポレオンの皇后となります。
  ナポレオンは、今度は18歳の高貴な姫君を輝かせる、ターコイズのティアラを贈りました。
  お姫さまの美しさを一層引き立てる頭上に輝くティアラ。


 
 一週間の宝石をご紹介します。あなたの生まれた日は何曜日ですか?

  日曜日:
太陽が支配する日 全ての黄色い石。 トパーズ、シトリン、琥珀。
  月曜日:
月が支配する日 ダイヤモンドを除いた全ての白い石。真珠、ムーンストーン、など。
  火曜日:
火星の影響を受ける日 赤い石 ルビー、ガーネット、スピネル、インカローズ。
  水曜日:
水に関連して青い石。サファイア、ラピスラズリ、ターコイズ。
  木曜日:
木星が支配する。北欧神話の雷神トールが守護。アメジスト、カーネリアン、血の色をした石。
  金曜日:
金星の日。美の女神アフロディテが守護。エメラルドだけ。
  土曜日:
土星の日。農耕の神サトゥルヌスの支配を受けている。守護石はダイヤモンド。

  参考文献:「夢見るジュエリ」岩田祐子 東京書籍
         「宝飾の文化史」海野弘 筑摩書房


                           生まれ曜日はコチラで→10000年カレンダー

[☆バレエコラム7]
- 舞踊 -

                         

  舞踊の始まりはもともと人間の本能的な行動にもとづいているといわれます。
  人々は、喜び、悲しみ、怒り、そして希望や勝利などの感情を、個人ばかりではなく集団で、身体を通して表現してきました。
  天地のリズムや自然世界に生きる動植物の生命のもつリズムを知り、そうしたものへの畏敬を、自らの身体で体現するように
  なったのです。風が吹き、木の葉が舞い落ち、雨が降り、波が寄せて返し、火山が爆発するという、人間が作り出すことのでき
  ない、自然の偉大なる力。自然界の営みや生命に感動し、それらが持つ神秘的な力への畏れを感じ踊ってきたのです。
  それは、宇宙のリズム。地球の動きからおこる太陽の動き月の満ち欠け、潮の満ち引き、動植物の成長、そして人間の生死。
  この生命のリズム(バイオリズム)が自然のリズムや音を作り出し、人間はそれに呼応して身体の動きを生み出してきたのです。
  この踊りが次第に個人の行為として表現されると、見せるという要素が高まり、観客が鑑賞する舞踊へと変化していきました。

  ヨーロッパの民族舞踊は、バレエに取り入れられているものが数多くあります。そのいくつかをご紹介します。


 
 マズルカ Mazurka
  
ポーランド中部地方、首都ワルシャワを囲むマゾフシェ地方の名前からマズルカの名称が生まれました。
  農民の踊りが氏族や貴族のあいだに伝わり、14世紀頃から広まり、19世紀には貴族の間に流行した。
  4分の3拍子を基本とする特徴的なリズムをもつ舞曲。ロシアの振付家プティバによって、バレエに取り入れられ、
  「白鳥の湖」や「コッペリア」に見られます。


  
ファンタンゴ Fandango 
 
 スペインの北東部アラゴン地方の民謡。陽気で軽快な3拍子のスペインを代表する舞曲です。
  グルッグのバレエ音楽「ドン・ジュアン」にも取り入れられています。
  またファリヤはこの民族舞踊をもとに、バレエ音楽「三角帽子」を創作し、第一幕の「粉屋の女房の踊り」が知られています。

 
 ボレロ Bolero
  
18世紀末に、スペインのカスティーャ地方のセギディーリャから発達したスペイン舞踊。
  「ボレロ」という語は「ボラル」という動詞から変化したもので「飛ぶ」という意味。
  1833年にはショパンが「ボレロ」を作曲しました。バレエに取り入れられたボレロは、キャラクターダンスとして、
  「白鳥の湖」「ドン・キホーテ」「コッペリア」「くるみ割り人形」などに見られます。
  バレエで「ボレロ」といえば代名詞のようになっているのは、1928年にパリオペラ座で初演されたモーリス・ラヴェルの曲。
  同じリズムとメロディが繰り返され、15分間クレッシェンドし続けるという特徴的な曲で、バレエの世界に留まらず広く愛されて
  います。現在では「ボレロ」といえばタン・タタタ・タン・タタタ・タン・タン というリズムと、1961年に作られたモーリス・ベジャールの
  特徴的な振り付けが目に浮かびます。


 
 参考文献

  「世界の民族舞踊」  宮尾慈良 新書館
  「バレエの招待」    鈴木晶 筑摩書房


[☆バレエコラム8]
- 衣装 -
 

                                  
                                   モレシャンの劇場日記


  金平糖、ジゼル、コッペリア、オーロラ、キトリ・・・キャラクターの名前を挙げただけで、その衣装が目に浮かびます。
  それぞれのストーリーとキャラクターを表現する衣装。決まったスタイルはあっても、衣装のディテールには演出家、脚本家の
  こだわりと舞台への思いが込められ、それを身にまとって、ダンサーはより一層輝く。
  
  20世紀初頭には、マルク・シャガール、ココ・シャネル、ジャン・コクトー、バブロ・ピカソ、マリー・ローランサンなどなど、時代の
  最先端を行くアーティストたちとのコラボレーションにより、衣装のデザインのファッション性が高まり、そしてバレエもアヴァン
  ギャルドなアートといわれるようになりました。
  現代においても、パリ・オペラ座と菱沼良樹、森英恵、毛利臣男。フォーサイスと三宅一成、川久保玲とマース・カミングハム。
  日本人デザイナーとバレエのコラボレーションもかず多くあります。

  宝塚歌劇団衣装デザイナー 任田幾英氏の話が新聞に連載されていました。
  舞台衣装をデザインするには、まず脚本を読み、脚本家自信も気づかない脚本の奥に潜んでいるもを見つけ出すことから始める。
  それは、舞台装置、証明スタッフも同じこと。それぞれの美学が宝塚という中での見せ方で融合していく。脚本家の意図を想像しな
  がら突き詰め、登場人物のキャラクターを考え、時代背景や場所を検証し、そしてデザインにとりかかる。
  まず、脚本ありき。舞台衣装は、デザインというよりメッセージ。セリフがなくても心情が伝わるように衣装で語る。
  そこが、普通の洋服のデザインとは違う。時代は感じている以上に早く変わる。お客様の持つ文化や美意識も変わっている。
  そういう完成を舞台に敏感に反映することが大事。宝塚の様式美を明確に打ち出したい。
  守ってばかりではいられない。追い続けていきたい。


  
〜衣装は、バレエに華と格を添えます〜

  参考文献 : 「ぴあバレエワンダーランド」ぴあ株式会社
           10/1-5 産経新聞記事

[☆バレエコラム8]
- ダンサーは進化し続ける -

                            
                               
シルヴィ・ギエム 「INVITATION」
 
  シルヴィ・ギエムが昨年「ボレロ」を封印しました。

  1990年に日本で最初の「ボレロ」を東京バレエ団と踊って以来、105回もの公演を重ね、ギエムの代表作ともいわれていた
  「ボレロ」。封印した理由を、


  
「別の作品をお見せすることも大切。踊り手は引き際を知ることも必要」

  と、ギエムのダンサーとしての生き方を表すキッパリした言葉で語るインタヴューの記事が載っていました。
  そして、ひとつの作品に自ら終止符をうち、ラッセル・マリファットの振付けで、更なる新たな世界を切り拓いています。
  ガラ公演で「白鳥第2幕」を踊ることについては、

  

  「若い頃はこのアダージオが好きではなかった。この場面を理解するには幼すぎた。今はそこにたくさんの詩が織り込まれてる
   ことがわかる」


 
 とのこと。

 
 たゆまぬ日々の積み重ねと、培った経験によって、ダンサー自身の作品の解釈が変わり、表現が変わり、進化する。
  そして、納得する道を追及し続ける厳しい姿勢。

  ギエムは、次シーズンはロイヤルバレエには出演しないとのこと。それはロイヤルを離れることではなく、


 
 「自分に合う演目がないから」
  「私の仕事は、疑いを持って常に問いかけること、まだまだ、ひるまずに進むべきだと思っています」


  
凛とした姿勢をあらわす言葉が印象的です。

  少し前に上梓された草刈民代さんの本に、同じような言葉をみつけました。


  
「時間の流れとともに、別れを告げる作品があり、新たな作品と巡り会う。40歳になった私は、ダンサーとしての自分がどのように
   幕を閉じるべきなのかを考える。残り少なくなっている"踊る"時間を大切にしたい」
  「結局、大切なのは、自分の信念。自分にとって、大切なものを探そうとする意志」
  「何ごとにもくじけずに、努力をし続けるしかない。大切なのは踊りに対する欲求に、素直になれる自分を目指すこと。
   そして、踊れることに対して、感謝をし、責任を持つこと」


  写真:
  シルヴィ・ギエム写真集「INVITATION」より
  左ページは、マリアに受胎告知をする天使ガブリエル
  フラ・アンジェリコ作(サンマルコ修道院)


  参考文献:
  読売新聞2005年8月23日
  「ダンスマガジン」11月号
  「バレエ漬け」草刈民代 幻冬舎



[☆バレエコラム9]
- プレパラーションとフィニッシュ -


                                  

  
「基本が大切」これはどんなことにも共通のことだと思います。
  そして
「挨拶、礼儀」もどんなことにも共通する基本的な大事なことです。

  バレエでの基本動作のひとつに、バーレッスン、センターレッスンでの、プレパレーション(最初の動作)とフィニッシュ
  (終わりの動作)があります。全てのバレエの動きは、突然始まるのではなく、ムーヴメントに入る前の呼吸を伴う準備、
  プレパレーションの動作から始まります。それは、身体の中心軸の意識や各関節のスムーズでしなやかな動き、全身の協調性、
  優雅な表現を意識して行います。
  そしてフィニッシュは、それまでの動きを、音楽が止むのに合わせて静かに余韻を持って終わらせる動作。バレエの美しい動き、
  流れるような動き、その始まりと終わりの意識をみずから持つことは、自分の身体への挨拶、礼儀のような意味もあるのではと
  思います。


  
プレパレーション=準備の動作

  
バーでの、プレパレーションのポール・ド・ブラ(腕の動き)は、頭をわずかにバーの方に向け、顔はその掌の方を向き、鼻で掌を
  突き抜けた先を見ます。
  息を吸い上体を引き上げ音楽のイントロの間に、腕をア・ラ・スゴンド(横に開いたポジション)からアン・バ(下に下ろし)アン・ナヴァン
  (みぞおちのところまで上げ)、ア・ラ・スゴンド(横に開いたポジション)へと軌跡をえがき、鼻の先で見るように目はその腕の動きを
  追います。


 
 フィニッシュ=終わりの動作

 
 ひとつのパの締めくくりには、腕をア・ラ・スゴンド(横に開いたポジション)から、アン・バ(下におろした位置)へ下ろし締めくくります。

  学生時代に茶道を習っていたことがあります。師事していた茶道の先生は、中学校で理科を教えている男性の先生で、
  その流派は江戸時代を通して最も広汎な広がりを持った大名流の流派でした。
  当時のその先生から教えていただいたことで、ずっと心に残っていて、日常の生活においていつも意識することがあります。

  お点前を頂戴しお茶碗をご主人にお返しするとき、また、先にいただいたお点前をお隣りの人に渡すときに、お茶碗を畳の上に
  置いてお渡しします。
  両手で持ったお茶碗を畳の上に置き、そのお茶碗から自分の手を離すその時、両手をいっぺんに離すのではなく、
  余韻を残すように、大切なもの或いは人との別れを惜しむように、手を離しなさい。
  このことは、流派を超えて茶道に共通のことである以前に、ものを慈しむ心であり、
「礼儀」ということだと思います。
  なにかを丁重に扱う、心を込める、思いを身体で現すということを学びました。

  バレエにも同じものがあると思います。
観客への礼儀先生への礼儀、そして、自分自身への礼儀
  プレパレーション、フィニッシュは自分の身体、表現することを慈しむ心、そして礼儀。

  レッスンのおしまいは、レヴェランスというお辞儀です。先生と生徒がお互いに敬意を払い、レヴェランスでレッスンを締めくくります。


  参考文献:
  「ニューヨークジョフリー・バレエスクール」健康ジャーナル社

  写真:「INVITATION」シルヴィ・ギエム写真集より


[☆バレエコラム9]
- 表現する -

                        
                          吉田都 「終わりのない旅」



  バレエは舞台芸術です。
  舞台芸術は、観客を意図した芸術です。
  表現することについて語られたいくつかをご紹介します。

  栗原小巻
  
  
スラミフ・メッセレル先生から教わったこと。バレエは芸術だけでなく、心を伝えることが重要。
  まなざし(日本語で「まなざし」と言って)を忘れないように。演技は心の表現であって、嘘であってはならない。

  下村由理恵

  
舞台での表現は、自分1人で作るものではありません。
  リハーサルに臨む前には自分の役を研究し、ストーリーと照らし合わせ自分だったらこうしたいとイメージをふくらませます。
  振付家、演出家の要求を、
いつでも両手を広げて受け入れられるようであること。
  
そして、自分では考えられたなかった表現を自分一人で作るのではなく、脚本家、演出家、相手役、まわりのキャラクター、
  音楽、衣装そして美術・・・それら
全てが一つとなってできることなのです。

  吉田都

  
立ち方、座り方、歩き方。同じ動作でも、役柄によって主人公の気持ちによって演じ分けなければなりません。
  バレエダンサーは、普段のレッスンで培われた基礎の上に
豊富な言語経路とボディボキャブラリーが必要です。


  1925年に出版され「幻の本」と言われていたアキムヴォルインスキーのロシアバレエ学校での講義をまとめた本「歓喜の書」に
  次のような記述があります。
  
  
舞踊芸術においては、身体のすべての本質が表出されることが要求される。
  
眼は耐えず積極的な自覚をもって自分を取り巻く世界を見つめ、身体はあらゆる方向に開かれることによって、
  魂の放出を通過させ、火付け役の道具となる。踊るとき、身体はつねに、自分の炎のような言語によって演技する。
  バレエの高次元の燃焼や陶酔を知覚することが出来る人は、自分の魂が発するすべての光を外に向かって開くことの
  出来る人だけである。


  
写真「吉田都 終わりのない旅」より


☆バレエコラム10]
- アティテュードとアラベスク -

                        


 バレエのポーズとして最も有名な、アティテュードとアラベスク。

 アティテュードは「姿勢、態度、様子」という意味。
 片足で立ち、他の片足の膝を曲げ、その足の身体の後ろ、あるいは前で90度の高さ(空中)に保つポーズ。
 イタリア、ルネサンス期の芸術家、ジョヴァン ニ・ダ・ボローニャの「天をかける マーキュリー」像を模範としたポーズ
 ともいわれています。
 マーキュリーの姿は天空を疾走する彫像です。
 モーリス・ルブラン作「アルセーヌ・ルパンシリーズ」の中で、ルパンの分身であるレニーヌ公が、このマーキュリー像について
 こんな風に語っています。


 
「脚はすんなりしていけるが、それでいて肉付けは強靭です。全体の姿が実によく勢いとスピードの感じをあらわしています」

 
アラベスクは「アラビア風の、唐草模様」の意味。
 片足で立ち、他の片足を後ろにのばしたポーズ。
 古代レリーフ、ギリシア絵画の断片、ラファエロの描いたヴァチカンの壁画に由来するなど諸説があります。
 アラビア風装飾、植物の葉や枝、蔦が絡み合いながら広がり伸びてゆく唐草模様。それが周期性をもって繰り返されることにより、無
 限に広がり伸びてゆく印象を生み出す。
 アラベスクという図柄は静的でありながら、そのパターンの中には、無限の広がりや動きを体現する模様。
 バレエ漫画「アラベスク」の冒頭で山岸涼子さんが、


 
「自らを乗り越え、無限なるものへのあこがれを示す動き、それがアラベスク」

 
と書いています。
 この無限の印象や感覚を得るためには、脚だけでなく、腕の動きや頭の位置、視線などが重要な役割を担っています。
 踊り手の視線が腕や指先と一体となって、遥か彼方に投げかけられることによって、限りなく伸びる無限のポーズとなるのです。
 空間に広げられた肢体の線、バランス。
 そして、静止したポーズのなかに感じる、スピードと伸びやかさと勢いの印象を与える緊張感。
 ひとつひとつのパーツのポジションではなく、腕、頭の位置、視線、呼吸、意識の広がりを持つことによってこの静止したポーズが
 無限の動きを感じる美しいポーズとなるのです。


 
参考:「バレエテクニックのすべて」赤尾雅人  新書館


  バレエコラム バックナンバー  1〜10